Top Commitment

スマート社会に素材で貢献するNew AICHI STEELをめざして


代表取締役社長 藤岡 高広

Part1. 大きな変革期を迎えた現代社会にあって

大変革期における経営の基本的な考え方

自動車業界の100年に一度といわれるパラダイムシフトの進展に代表されるように、スマート社会に向けて世の中は急速に変化しています。特に自動車の電動化の進展は、当社の主力製品である特殊鋼の需要という面では逆風となることは確実です。

しかし、どのような時代になっても、当社は価値創造モデルに示すように「環境」「社会」「ガバナンス」の視点をベースに取り巻く課題にしなやかに適応し、社会に価値を提供し続け、年輪的な成長を果たしていきたいと考えます。

新中期経営計画の策定

中期経営計画の重点施策
中期経営計画の重点施策

このような考えのもとに、2040年の環境を見据えてめざす姿を描くことで、グループ全社員が実現へのベクトルを合わせ、揺るぎないグループ経営基盤を確立するため「2020年度中期経営計画」を策定しました。

この新中計では「もっといい製品づくり」「もっといい構えづくり」「社員が幸せな会社づくり」をめざす姿とし、以下の重点施策を進めることとしました。

すなわち、コンプライアンス/ガバナンスをベースとして、「安全→品質→生産→原価」の順序をしっかり守り経営基盤を強靭なものにすること、2040年を見据えスマート社会へ新たな商品・サービスを提供していくための種まきを加速させていくこと、当面足元で需要旺盛な既存ビジネスにより着実に収益をあげていくことです。

素材でスマート社会に貢献

2040年には持続的に地球環境を維持していくために不可欠なEV化・FCV化の進展は必至で、モーター・電池の需要が大幅に増加します。また、より安全安心な社会づくりに貢献する自動運転の普及にともなうセンシング技術の高度化、水素社会の広がりによるステンレス用途の拡大など、すでに当社が着手している多くのプロジェクトが、具体的な形になって花開いてくるものと考えています。

私はかねてより鉄を中心とした“素材”という観点から、どうしたら社会に役立てるだろうと考えてきましたが、スマート社会の到来によって、様々な分野において当社の技術力が必要とされビジネスチャンスが生まれてくると確信しています。この考えのもと、新たなビジネス創出に向けた研究・開発のスピードを加速させるため、2018年1月に「未来創生開発部」を新設しました。開発アイテムについては、社会への貢献度や経営へのインパクトが大きく社員が夢を持って取り組めるものを選定し、当社の高い素材技術をベースに、新ビジネスへの発展が可能な分野に重点的に取り組みます。

これを収益へと結びつけるためには、やはり高い技術力を持つことが大切です。現在、自動運転支援システムについては、18年2月に出資した先進モビリティ株式会社殿と共に進めていますが、先進的な会社と一緒に仕事をすることで揉まれて、技術力を更に高め、当社の存在感をさらに発揮していくものと期待しています。創業者の豊田喜一郎が、特殊鋼で日本初の国産車づくりに貢献しようと高い志で臨んだように、我々もトヨタグループ唯一の素材メーカーとしてのプライドを持ち、スマート社会の実現に素材の力で貢献していきたいと思います。

Part2. 足元の課題にも着実に対応していく

生産量の増強とコスト競争力強化

足元の課題としては、原材料やエネルギーコストが増加傾向にある中で、いかにしてコスト競争力を高めていくか、そして2020年頃までは着実に増えると見ている旺盛な需要に、いかにおこたえしていくかの二点です。

鋼カンパニーでは従来から計画的に取り組んでいる4Sリエンジ※1を確実に進め効果を出していくことと並行して、現在の旺盛な受注に対応するため、いかに増産するかをカンパニー一丸となって知恵を絞っています。鍛カンパニーでは、次世代車を含めてグローバルで高い需要拡大が見込まれるギヤ製品の競争力強化を図るべく、将来のグローバル展開も見据えた新工法によるローリングミルラインを建設中です。

スマートカンパニーでは、高いシェアを誇る放熱部品(HV・EV向けパワーカードリードフレーム)の生産能力増強とBCM・BAP※2対応のため二拠点体制とすべく、岐阜工場に新生産棟を建設し、今年10月の稼動を目標に進捗中です。

  • ※1 4Sリエンジ生産性向上と省エネルギー化を目的にSimple・Slim・Short・Straightをめざした生産プロセス改革
  • ※2 BAPBackup Action Planの略。設備故障等で生産が不可能になる場合に備えて、代替生産を可能にする設備や手順、予備部品等をあらかじめ確保すること。
 

新しい技術で高付加価値を提供

今後、既存ビジネスの収益を拡大していく中で大きなポイントとなるのは、やはり高付加価値化です。例えば鍛造後に冷間鍛造・加工までを当社で行うとか、磁石であればロータアッシー化するなど付加価値を付けた仕事の仕方をすることで、お客様により喜んでいただけるものと思います。そのための準備も既に始めています。

Part3. New AICHI STEELへの変革

今こそ振り子を大きく振ろう

1.8事故、新本館完成を契機に、当社は「変わる・変える」をキーワードに、New AICHI STEELへの変革を進めています。

私は常日頃、「振り子」を持ち歩いています。1.8事故から設備が復旧した際、この教訓を片時たりとも忘れないためにと、最初の圧延で抽出された第1号の鋼材で文鎮を作り基幹職社員に配りました。これにチェーンを付けて振り子を作り、今、私は社員がより大きな振幅で物事を考えられるようにと、この振り子に例えて「振り子を大きく振ろう」と伝えています。

時代が大きく変わろうとしている中で、小さな振幅のままでは、従来のやり方を超えることはできません。これまでとは全く違った視点で物事をとらえ、現状をブレイクスルーし思い切って変えてみる。一人ひとりの意識改革がこれからの愛知製鋼を変え、強くしていきます。「振り過ぎたら戻せばいい」というくらいの気持ちで仕事に向き合うことが大切なのです。

1.8事故2016年1月8日に知多工場 第2棒鋼工場で発生した爆発事故

働き方を「変える」取り組み

働き方改革にも力を入れています。まずは私自らがリーダーとして、基幹職に対して基本的な考え方を教育し、業務遂行のPDCAの中でどんなコミュニケーションで部下と接すれば、イキイキとした職場や働き方改革につながるのかを示唆しました。また女性活躍にも注力しており、全国的な発表会の場で女性QCサークルが表彰されるなど、今や当社の成長に欠かせない重要な戦力です。家庭を持つ社員がより働きやすいようにと在宅勤務制度の導入や企業内託児室の設置準備もすすめています。また、来年11月頃にはコンビニエンスストアやレストランなどを備えた厚生会館も完成しますし、社員から見て「会社が変わったな」と思えるようにしていきたいと思っています。「会社が変わった」と思えば、「自分も変わらなければいけない」と思うでしょうし、それが社員の笑顔へとつながっていけばよいと思います。

Aichi Wayの策定

新しい時代へ対応すべく「変わる・変える」取り組みを進める一方で、当社には豊田喜一郎の創業の精神をはじめとして継承すべき価値観もあります。喜一郎の「高い志」をはじめ、拡大していくグローバルオペレーションの中でもアイチグループ全体が共通の価値観・行動規範を持つべきだという信念に基づき、社員にとって分かりやすく、心のよりどころとなるものをみんなで作ろうと、新たに「Aichi Way」を策定しました。国籍や地域を問わず、仕事において物事を考える時、実際に行動に移す時の普遍的な精神的支柱を明文化したものです。

この「Aichi Way」も「振り子」も、常にトップマネジメントが言い続けることが風土改革につながると考えています。

仕組みやルールばかりを増やすのではなく、考え方を浸透させることが風土改革になるということで、「Aichi Way」の果たす役割は非常に大きいと思っています。

New AICHI STEEL 実現に向けて

以上のような取り組みによって、私はこれからもステークホルダーの方々とのコミュニケーションを大切にしながら、原点である“素材”で新しい社会に貢献するとともに、社員皆がイキイキと働けるような会社づくりをめざしてまいります。