第三者意見

今年度のレポートは、マテリアリティの設定とそれに全面的に対応した記載内容となり、経営トップの明確な考え方に基づいて、CSRにどう取り組んでいるのか、なぜ取り組んでいるのかが明確でかつ体系的に記述されている点が大きな特徴です。

日本福祉大学 執行役員
国際福祉開発学部教授

千頭ちかみ さとし

マテリアリティ明確化とSDGsへの対応が進化

昨年度から、GRIガイドライン(G4)に準拠してマテリアリティの設定と対応がなされてきましたが、今年はレポート内容がさらに精査され、ISO26000の中核課題およびSDGsのターゲットとの関係性についても明記されました。「愛知製鋼の重要課題(マテリアリティ)」は、マテリアリティと経営指標および本レポートとの記載個所とを明確に対応付けたものであり、レポートの完成度がより高くなっていると高く評価できます。その結果、持続可能な地域社会の実現に向けて企業としての貢献の姿勢が明確になっています。

SDGsに関しては、5つのマテリアリティによって、国連が設定した17のターゲットのうち12のターゲットをカバーしていることが示されており、企業活動が社会の持続可能性に大きくかかわっていることが読み取れます。

このようにレポートの記載が進化することにより、愛知製鋼の様々な取り組みが何を目指しているのかが、ステークホルダーや読者により明確に伝わるようになった点が評価できます。

愛知製鋼としてのブランド価値の向上

社長メッセージで述べられている「もっといい会社になろう」は、愛知製鋼というブランド価値をさらに高めていくために非常に重要で訴求力の高いメッセージだと評価できます。

いうまでもなく、愛知製鋼の製品は自動車のみならず様々な分野で、世界中で利用されています。したがって、社会のニーズに対応したよりよい製品を開発し、「いいモノづくり」を進めて製品の質を極めていくことは、ブランド力向上の必須条件ですが、同時に、国内外に立地する生産現場が、それぞれの地域の中でしっかりとその存在価値を高めていくことも、ブランド力向上に欠くことのできない要素だと考えます。これは、地域社会からの評価を高めると同時に、働く従業員の誇りとやる気を支えることでもあります。今後のさらなる発展を期待します。

新しい働き方の実現

新本館の建設により、一人ひとりの働き方と意識に大きな変化が生まれつつあることがわかります。万全の地震対策や最先端の省エネ技術に裏打ちされながら、空間と機能がより社員の知的生産性向上につながるように様々な工夫がなされていることがよくわかります。8階まで吹き抜けの「コミュニケーション階段」での出会いを活用、という社員の声も紹介されていますが、新本館が、社員の創造性や交流・意見交換を創発し、社会のニーズに応じた新しい製品を生み出していく力を生み出す場になることが楽しみです。その意味で、「コミュニケーションが育むイノベーション」というタイトルは秀逸です。来年3月に完成予定のビジターセンターを拠点として、地域との新たな共生の取り組みが進むことを期待しています。

環境課題への着実な取り組みが継続

2016年度には新たな5ケ年計画である「アイチ環境取り組みプラン2020」が策定されました。詳細についてはWEB版に掲載されています。2016年1月の事故の影響により生産過程におけるCO2総排出量は2020年目標にわずかに到達していませんが、4Sリエンジの継続的な取り組みにより生産性が大きく改善していることや、物流の効率化、生産に伴う副産物の低減など、各項目において着実に成果をあげています。なお、「アイチ環境取り組みプラン2020」は今後5年間の環境行動の指針・計画となるものですので、冊子版の紙面に限りはあるものの、各項目の到達目標を記載しておいた方が読者にわかりやすいかもしれません。次年度に期待したいと思います。

最後に

2020年連結営業利益200億円という高い目標に向かって、本年度からカンパニー制が導入されています。柔軟でかつ高いガバナンス機能を持つ組織体として、今後さらに企業と社会との共有価値の創造に向けて発展されることに期待いたします。

当意見は、経営層を含む関係者へのヒアリングに基づいて執筆しています。

第三者意見を受けて

千頭先生には、2010年度より継続して貴重なご意見ならびにご提案をいただき、感謝申し上げます。

今年度は、2016年1月8日に発生した事故を契機に、ステップアッププランの推進やカンパニー制への移行を始めとした経営体質の抜本的な強化およびNew AICHI STEELに向けた新たな取り組みに全社を挙げて邁進してまいりました。その結果について専門家のお立場からご評価・ご指摘いただきました事項につきましては、当社が今後も持続的な成長を続けていくために大いに参考とさせていただく所存です。

今回ご評価いただいた、ISO26000やSDGsとの関連付け、愛知製鋼としてのブランド価値の向上、新しい働き方の実現などについては、さらなる充実を図るとともに、新しい働き方による成果を社会への貢献と年輪的成長に繋げるよう努めてまいります。

また、ご指摘いただいた、ブランド力向上のための国内外生産拠点の地域における存在価値向上や「アイチ環境取り組みプラン2020」の成果をわかりやすくお伝えするレポート構成などにつきましては、各部門で課題を共有し、次年度に向けて検討を進めてまいります。

今後は、来年3月に完成予定のビジターセンターを活用してよりステークホルダーの皆様とのコニュニケーションを深め、「いつまでもこの地にあり続けてほしい企業」を目指し、CSVの視点で継続して地域社会・環境へ貢献してまいります。

上級執行役員 広報部担当
村上 一郎