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養 液栽培における鉄二価イオンの吸収特性について
 出典:宮崎大学 農学部 位田教授 (2007年)

 愛知製鋼によって開発された酸化第一鉄製材(鉄二価イオン)の'鉄力あぐり','鉄力あ くあ'の施与によりいくつかの植物で生育や品質の改善が認められているが,その作用機作や最適施与法についてはまだ充分明らかではない.
 そこで種々の作物を供試し,'鉄力あくあ'の養液栽培における最適な供試モデルの検討を行った.また,昨年度トマトの育苗時に施与した'鉄力あぐり'の 収量・品質に及ぼす影響についても合わせて報告する.

1.鉄二価イオンがトマトの生育 に及ぼす影響

[材料および方法]
トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)‘ハウス桃太郎’を供試した.鉄力あぐりを播種培土(S)あるいは移植培土(T)に3.5g L-1ま たは5.0g L-1混和,もしくは無添加(C)とし,播種18日後と移植から48日後の定植時に生育調査を行っ た.定植は各区10株3反復とし収量ならびに終了時の生 育についても調査した.

実験場所 宮崎大学農学部木花フィールド温室
期間 10月17日〜5月5日
温度 15-30℃
相対湿度 65-85%
20×30×8cmの育苗箱で栽培
処理区
 C区   鉄力あぐりを添加しない
 S35区 鉄力あぐり3.5 g L-1添加
  S50区 鉄力あぐり5.0 g L-1添加

[結果および考察]
鉄力あぐりの添加により子葉長が有意に増加し,発芽率,胚軸長,子葉幅,根長でも増加傾向がみられた(第1表).しかし移植時 のみの施与でも,播種時,移植時の2回施与と生育や収量に有意な差がなかったことから,移植培土へ3.5g L-1以上添加するのであれば,コスト削減になり,かつ収量が増加し糖度も高まり十分良好な結果が 得られると考えられた(第2表第3表).

注:本第1章の使用資材は現在販売しておりません。

2.異なる鉄製材で養液栽培した コマツナの生育

[材料および方法]
コマツナ(Brassica rapa L. var. Peruviridis)‘極 楽天’を供試し,湛液水耕コンテナで栽培を行った.照明には昼光色蛍光灯を用い,光合成有効光量子束は70 μmol m-2 s-1,平均気温は24℃,平均相 対湿度は60%であった.鉄資材としてEDTA鉄を用いた園試処方区,鉄力あくあ1 ml L-1を添加したあくあ標準区, 0.5 ml L-1を 添加したあくあ1/2区,鉄無施与の鉄欠区の4区を設け6週間栽培した.

栽培場所 宮崎大学農学部促成園芸学実験室

[結果および考察]
標準,1/2いずれのあくあ添加区でも園試処方区に比べ,生育の顕著な増進が認められた(第4表).それに対し地下部新 鮮重にはEDTA鉄と鉄二価イオンの違いによる影響はあまりみられなかった.一方,鉄欠如区では葉数や地上部新鮮重は園試処方区と大差はなかったのに対 し,地下部新鮮重や葉の大きさが有意に減少した.いずれの調査項目でも,あくあ標準区とあくあ1/2区の間に有意差がみられなかったことから,鉄力あくあ の施与量は標準の1/2量の0.5 ml L-1でも十分な効果が得られ,養液栽培における生産性 向上に大いに貢献すると考えられる.

異なる鉄資材で栽培したコマツナの生育
EDTA鉄
鉄無施与
あくあ標準
あくあ1/2

3.EDTA鉄との比較

[材料および方法]
グロースチャンバー内(昼光色蛍光灯,光合成有効光量子束100μmol m-2 s-1,12h明期,気温24℃, 相対湿度65%)に設置した湛液水耕(園試処方培養液の微量要素の鉄源のFe-EDTAを鉄力あ くあ 0.5, 1 ml L-1で代替)コンテナで養液栽培を行った.鉄力あくあを施与したヤングリーフ各種において,多く の鉄含量は1〜2mg/100gFWであったが,ビート (Beta vulgaris L. var. esculenta)葉では7.8 mg /100g FWと非常に高い値を示した.通常のビート根では0.4mg程度であるので分配に興味が持たれる.

供試作物 ロロロッサ(Lactuca sativa L. var. crispa
         レッドロメイン(Lactuca sativa var. longifolia Lam. )
               テーブルビート(Beta vulgaris L. var. esculenta Gurke
栽培場所 宮崎大学農学部促成園芸学実験室
湛液水耕法 1/2園試処方
播種2週後より処理開始,処理30日後に収穫鉄含量を測定

鉄力あくあを施与した養液栽培ヤングリーフの鉄含量
鉄力あくあを施与し た養液栽培ヤングリーフの鉄含量

また,鉄力あくあを施与したイチゴ(Fragaria×ananassa)葉中の鉄含量は対照区の倍近くの1.7mgにもなり,これ もイチゴ果実中は通常 0.3mg程度であるのと対比し調査を進めたい.

イチゴ葉中の鉄含量
イチゴ葉中の鉄含量

培養液塩類濃度を極端に高めた(24.0 dS m-1)コマツナ栽培において,対照区ではほとんどが枯死したのに対し,鉄力あくあ10倍施与区で は生育は抑制されたものの枯死個体は少なかった.

[材料および方法]       
供試作物 コマツナ(Brassica rapa L. var.perviridis )‘極楽天’
気温 24℃,相対湿度 65%,
蛍光灯,光合成有効光量子束100 μmol m-2 s-1,12h 明期
コンテナ湛液水耕 園試処方
処理区 EC 2.4dS m-1区    EDTA鉄区
      EC 4.8dS m-1区   あくあ標準区(1 ml L-1)
      EC 24.0dS m-1区   あくあ2倍区(2 ml L-1)
                     あくあ10倍区(10 ml L-1)

EC 24.0 dS m-1 +あくあ標準区
EC 24.0 dS m-1 +あくあ標準区

EC 24.0 dS m-1 +あくあ10倍区
EC 24.0 dS m-1 +あくあ10倍区

高pH条件下でのコマツナの生育
高pH条件下でのコマツナの生育
EDTA鉄区 あくあ区 EDTA鉄区
あくあ区
EDTA鉄区
あくあ区
pH 8.5 pH 7.5
pH 8.5

鉄力あくあ施与が発根に及ぼす影響を調べたところ,テーブルヤシ(Chamaedorea elegans)ではEDTA鉄 3ppm区6個体いずれにおいても発根が認められなかったのに対し,鉄力あくあ1 ml L-1区 では1個体を除き発根し平均根長3.4 cm,平均発根数11.5というように明らかに発根が促進された.

[材料および方法]
185×135×61mmのプラスチック容器でハイドロボール耕
園試処方
平均気温 24℃,平均相対湿度 62%
処理区    
       鉄力1/2区(0.5 ml L-1)
       鉄力標準区(1 ml L-1)
       EDTA鉄区 


テーブルヤシの発根におけるEDTA鉄との比較(処理14日後)

ローズマリーの発根におけるEDTA鉄との比較
[材料および方法]
供試材料 ローズマリー (Rosmarinus officinalis L. )
320×230×50mmのトレーでハイドロボール耕
0.5 ±0.04 g に 調製したローズマリーを挿し木
園試処方
最初の2週間は室内,平均気温 24℃,平均相対湿度 62%
その後,21℃,65%,16h明期,136 μmol m-2 s-1条 件下へ移動
処理区 EDTA鉄1/2 区   
       EDTA鉄 区
      あくあ1/2 区(0.5 ml L-1)
         あくあ標準 区(1 ml L-1)

ローズマリーの発根状況(処理4週間後)
EDTA鉄1/2区
あくあ1/2区
ローズマリーの発根状況(処理4週間後)

一方,ブライダルベール(Gibasis pellucida)のように根長,発根数どちらもが,鉄力あくあ,EDTA鉄それぞれの濃度を変えても有意差がないものまで有り多様で あった.

[材料および方法]
供試材料(Gibasiss pellucida D.Hunt. )
320×230×50mmのトレイ でハイドロボール耕
頂芽を切除し3節で調製したブライダルベールを挿し木
園試処方
平均気温 24℃,平均相対湿度 62%
処理区    
        EDTA鉄1/2区
        EDTA鉄標準区
            鉄力あくあ1/2区(0.5 ml L-1)
        鉄力あくあ標準区(1 ml L-1)

ブライダルベールの発根におけるEDTA鉄との比較(処理14日後)
ブライダルベールの発根におけるEDTA鉄との比較(処理14日後)

供試した作物の多くで発根は促進される傾向が見られ,カラシナ(Brassica juncea var. cernua) のスプラウトでは,鉄含量には全く差がなかったのに発芽や発根は鉄力あくあ区で明らかに優れていた.

[材料および方法]          
供試材料(Brassica juncea var. cernua Jorb & Hem.)
130×75×55mmのトレイに入れたウレタン15個に各3粒播種,2反復
温度 22℃,相対湿度 75%
蛍光灯,光合成有効光量子束100 μmol m-2 s-1,12h 明期
6日後に発芽率,10日後に鉄含量
処理区    
      EDTA鉄区
      鉄力あくあ区(1 ml L-1)
          
播種6日後
播種10日後
カラシナの発芽におけるEDTA鉄との比較
カラシナの発芽におけるEDTA 鉄との比較

カラシナの発芽におけるEDTA鉄との比較
EDTA鉄
あくあ標準

トルコギキョウ(Eustoma russelliaum),デン ファレ(Dendrobium phalaenopsis)を供試し,鉄力あくあ0.5 ml L-1区とEDTA 鉄 1.5ppm区を設け花持ちの試験を行った結果,吸水量ならびに11日後の鉄含量は鉄力あくあ区でEDTA鉄区より増加していたが,花持ちに有意な差はな かった.葉の退色は鉄力あくあ区の方が抑制される傾向が認められた.

[材料および方法]
供試作物 トルコギキョウ(Eustoma russelliaum Griseb )
         デンファレ(Dendrobium phalaenopsis
処理区  EDTA鉄1/2区
      鉄力あくあ1/2区(0.5 ml L-1)
吸水量
鉄含量
切り花の吸水量および鉄含量

注:これらのデータは記載した条件下で得られたものです。栽培条件によっては結果が異なる場 合があります。

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