第8回

Smart, スマート都市建設、マグネティックスと地球再生考

2018年2月10日(土)長野県伊那市長谷の道の駅域での自動運転バス実証試験(国土交通省;中部整備局)に参加することができた。国土交通省の招待を受けてのことである。

20人乗りの実験用バス(先進モビリティ(株))の車体前方下部に、愛知製鋼で開発された

磁気ガイドシステムのMIセンサモジュールが取り付けられており、これとは別に道路面のバス走行ガイドラインに沿って埋め込まれた微小なフェライト磁石マーカが発生する微小残留磁界を遠隔非接触検出するシステム(Global Magnetic Positioning System ; GMPS)を実見できた。

テストコースは全長約4kmであったが、直線走行主体の比較的簡単なコースではGPS走行、直角走行の狭い住宅街道路での高度運転コースでは、GMPS走行であった。直角走行域では、フェライト磁気マーカ(直径30mm、長さ35mm円柱)が50cm間隔で密に設置されており、自動運転バスでベテラン運転手と同じ走行ができるようになっている。バスのスムーズで安定した曲折走行は試乗で確認できた。積雪状態でも対応できるシステムである。

このGMPSは、既に2017年度に実証試験が3回実施されており(滋賀県道の駅(国土交通省)、北海道広尾の道の駅(積雪対応;国土交通省)、沖縄県(バス停正着制御;内閣府)、いずれもトラブルゼロの実績である。今回の長野県の実証試験はGMPSの4回目の実証試験である。この計4回の大掛かりな現地実証試験を通して明らかになったことは、自動運転バスで乗客の生命を託すことができる技術(GMPS)アリ、との実績である。他の方式は、快晴昼光、トンネル外や樹木などのない開放空間などでの限定つき稼動であり、とても生命を托せるものではない。GMPSは、さらに人間でもラインが見えない積雪道路でも稼動できるものであり、「超人システム」でもある。「自動運転技術の中に十分信頼できる技術あり。」という実績は、世界中の自動運転開発技術関係者を大いに勇気づけるものである。

このGMPSは、2005年愛知万博でのIMTS(会場間無人運転バス列運行磁気ガイドシステム)での課題を克服することを目指して開発されたとのことである。すなわち、当時の磁気マーカは大型のNdFeB強力磁石円柱マーカであり、強い残留磁界で空き缶などの磁性物体を吸着して交通障害となったり(保守コスト)、強力磁石材および磁石への湿気侵入防止のための保護ケースの特注などによるコスト高で実用的でない、などのコスト問題があった。その背景には、車両の振動環境に耐え屋外使用可の高感度マイクロ磁気センサが存在していなかった、などの技術的問題があった。その後、同社では、スマートフォンなどの携帯電話用のアモルファスワイヤMIセンサ電子コンパスを量産するシステムを開発しており、高性能の高感度マイクロ磁気センサを駆使できる体制を確立していた。この技術基盤の上で、同社では保守や製品などのコスト問題の少ない弱い安価な磁石であるフェライト磁石をマーカとする課題に挑戦し、各種の道路環境外乱磁界を相殺しつつマーカ磁石の微小磁界のみを検出するという、新たな磁気センシングシステムの開発を目指し、成功したものである。

この政府官庁主催の2017年度の4回に亘る自動運転バス実証試験で「託命信頼性」の実績を示したGMPS技術は、各方面での社会プロジェクトの直接、間接の推進エネルギーとなっているようである。例えば、2月15日に報道された「日本の経済産業省、企業20社以上による自動運転バスなどによるベトナムスマートタウン建設プロジェクト」では、自動運転バスが目玉のひとつになっている。自動運転バスは、GMPSがなければ、夜間や逆光、雨天などでは不安定であり、現時点で全体としてはまだ社会に受容されるものではなく、スマート社会建設の核にはなり難い状況である。

このような状況下で、GMPSが、Smart Town, Smart City, Smart Society などを具体的に企画できる状況を生み出していることは注目に値する。上記の報道では、Smart Town の目標は、大都市の課題である環境汚染や交通渋滞、交通事故などを軽減できる(予防できる)都市の建設、とある。この Smart, スマートというキーワードは、I-o-T とともに急速に普及しているが、イメージはかなり変化してきているようである。スマートフォンの出始めのころは、「洗練された、きびきびした、賢い、手際のよい、粋な、ハイテク」などのようなイメージであったと思われるが、Smart Town, Smart City では、「自動運転バスなどで交通渋滞や交通事故が少なく、高齢者も安全・安心に暮らせ、大気汚染や水質汚染などの少ない、省エネルギーや自然エネルギー発電など、街全体がハイテクで賢いこと」のようなイメージのように思われる。これは、ここ10年間のうちに、インターネット世界を通して、市民の意識が personal, wearable からsociety, security へと「社会性」や「環境調和意識性」を帯びて変化発展してきていることを示しているように思われる。このことは、世界的に高度成長による大都市化が進行して生活環境が悪化した果てに、市民の要求が反省とともに高度化し、遅まきながら人類の進歩を示しているとも考えられるが、裏返せば、これを支える科学技術の進歩の反映とも考えられる。すなわち、市民の希望が具体性を帯びるためには、科学技術の発展が必要であり、それなくしては、夢や空想的希望に終わる。

GMPSは、このような人類の Smart Society 創造の希求の流れの中で、自動運転バスに関する信頼性(託命信頼性)と実現性の高い科学技術を確立しているものであり、自動運転が夢物語ではないことを実証実験の実績で表明しており、現代の科学技術時代の社会形成における科学技術力を示している。

なお、GMPSのモジュール磁気センサシステムを構成するアモルファスワイヤCMOS IC磁気インピーダンス効果センサ(MIセンサ)の応用からの視点では、以下のような感想がある。

  • (1) 2002年から愛知製鋼によって開発・量産されているスマートフォン・携帯電話用電子コンパスチップでは、MIセンサが気儘な人間の行動に整合できるウエアラブル高性能マイクロ磁気センサであることが実証されている。
  • (2) 上記のGMPSは、世界的な過熱状態にある自動運転技術開発競走の中で、昼夜の別なく、逆光の有無に関わらず、天候に関係なく、トンネルの中でも、積雪状態でも、中山間地域でも、常時安定に正確に稼動する磁気ガイドシステム自動運転バスを構成し、政府官庁主催の多数回の実証試験で実績を示している。MIセンサは、GMPSの磁気センサとして機能している。屋外使用による温度変化や降雪・積雪を含む天候変化・湿度変化の激しい、さらに路面の凹凸などで変化する車両の振動や道路環境での電磁波外乱に曝されても、MIセンサは安定に、繊細に、タフに動作できることが実証されている。
  • (3) GMPSと同時期に、プロ野球投手投球回転解析ボール(MAQ;愛知製鋼(株)とミズノ(株)との共同開発)が開発された。物体の回転計測はこれまで「ジャイロセンサ」で行われてきたが、プロ野球投手の投球回転数は50rps に達する高速回転であり、硬式野球ボールに内蔵できるMEMS型ジャイロセンサの計測可能回転数は最高で17rpsであるため適用できない。そこで発想を転換して、愛知製鋼では量産されている電子コンパス地磁気検出用3軸MIセンサチップをボールに内蔵させ、地磁気内での磁気センサの回転による相対的地磁気変化の計測からボール回転数を計測する方式を採用して、MAQ開発に成功したものである。MIセンサの地磁気検出の高感度特性と高速応答性(GHz可能)が活かされている。これまで、高感度性と高速応答性を同時に備えた磁気センサは存在しなかった。
  • (4) 環境汚染や交通渋滞などの大都市問題を軽減し、環境との調和を志向する「スマート社会」の創造は、日本政府・企業群によるベトナムスマートタウンプロジェクトなど、これからの大規模な世界的プロジェクトに発展すると予想されるが、GMPSの開発による自動運転バスの実現を皮切りに、スマート社会のI-o-Tハイテクインフラ制御や防災セキュリティの技術である水道水量マイクロ磁気センサチップや漏電センサチップなどが、MIセンサによって相継いで開発されていくものと考えられる。(高性能マイクロ磁気センサであるアモルファスワイヤMIセンサは、その特異性や優位性が益々鮮明になってきており、社会の要求と呼応しつつ、愛知製鋼(株)によって、「パーソナルセンサ」から「ウエアラブルセンサ」、そして「スマートセンサ」・「バイオニックセンサ?」へと絶え間なく生長し発展させられている。)