トップメッセージ

社員全員が心をひとつに、モノづくりを更に進化させ、
ステップアップさせていくことで年輪的成長を果たしてまいります。


厳しい経営環境のなか、2015年度を総括され、どのような年だったとお考えですか。

取締役社長 藤岡 高広

2015年度の振り返り

はじめに2016年1月8日に発生した当社知多工場の爆発事故により、近隣住民の皆様、お客様や関係者の皆様、そして当社社員ならびにご家族の皆様に、多大なるご心配・ご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。また、代替生産や早期復旧にご協力いただいた鉄鋼各社様、トヨタグループ各社様をはじめとする関係各位へ、心より感謝申し上げます。外部環境は、円安やアジア経済の減速など非常に厳しい環境であったにもかかわらず、皆様からの絶大なご支援、ご協力により、爆発事故の影響を最小限に抑えることができ、わずかながら黒字を確保することができました。今回学んだことを、当社の将来に向けて活かしていくことはもちろん、鉄鋼業界をはじめとした製造業界全体にお伝えし、二度と同じような事故が繰り返されないよう情報共有していくことが当社の責務だと考えております。

コンプライアンス・ガバナンス機能の強化に向けて

今回の事故で、安全意識やルール、設備による安全の保証など、当社の弱い部分が浮き彫りになりました。今回の事故を徹底的に振り返り、取引先様からのご支援・ご協力の中で学んだことを踏まえ、鋼材から鍛造までの全体最適の視点で、モノづくりのレベルをよりいっそう上げてまいります。そのための取り組みとして、安全・生産管理・物流面などを中心とした「ステップアッププラン」を新たに策定し、全部署、全社員が一体になって取り組んでまいります。具体的には、フェールセーフ※1の思想や教育の徹底で安全対策に取り組み、生産をさらに効率的にしていくとともに、BCM・BAP※2をより強固かつ実践的なものにしていく。これらのことを「ステップアッププラン」を通じて実現してまいります。

各テーマの確実な進捗フォローでV字回復と目標達成を目指す

事業についていえば、現在取り組み中の「鋼材4Sリエンジ※3」が計画通りに進んでいます。これにより更なる増産やタイムリーな供給にも対応できるようになり、物流ロスの改善や生産効率もあわせて向上させます。また原価低減活動である「ZZZ(トライゼット)200※4」が新たにスタートしました。これまでの活動と違うのは全てのセグメントに収益リーダーを置き、確実に収益に結びつける活動を強化しています。そして収益基盤をよりいっそう強固なものにすることで、V字回復と目標達成を目指しています。

※1 フェールセーフミスや誤操作を未然に防ぐという前提に立った設計手法。

※2 BCM・BAPBCMはBusiness Continuity Management(Plan)の略。事業の継続管理・計画。BAPはBack up Action Planの略。設備故障等で生産が不可能になる場合に備えて、代替生産を可能にする設備や手順、予備部品等をあらかじめ確保すること。

※3 鋼材4SリエンジSimple Slim Short Straightを目指した生産プロセス改革。

※4 ZZZ(トライゼット)200「全員参加で、全力で、絶対やり抜く」、そして2020年度連結営業利益目標200億円以上を目指すという意味で名づけられた原価低減活動。

2020年ビジョン達成に向けた事業基盤強化の進捗はいかがでしょう。

1Sをベースに社会に貢献する製品づくりを進めます

今回の事故で学んだことの一つに、当社の主力製品である特殊鋼の社会における重要性を社員全員で再認識できた、ということがあります。創業理念である「よきクルマは、よきハガネから」を「よき社会は、よき素材から」へ進化させ、モノづくりに取り組んでいます。クルマの走る、曲がる、止まるに関する重要な部品を製造する素材メーカーとして、当社製品が、社会で重要な役割を担うものである、という使命感をもってモノづくりに取り組むことが必要です。

また改めて思うのは、当社の企業文化である「1S※5」が企業経営にとっての根幹であるということです。事故の発生に対しても、「1S」のひとつである「正直」をモットーに、できるかぎり正確な情報を適時適切に発信してきました。今後も、全社員への「1S」のよりいっそうの浸透をはかり、「ステップアッププラン」の確実な実行により、さらなる事業基盤強化を進めていきます。

鋼材事業の価値の更なる向上を目指して

今後、ますます燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)の普及など、自動車の多様化が進む中、特殊鋼の使用原単位は減ると同時に、よりいっそう小型軽量で高強度な素材が求められるようになっていくでしょう。こういった社会の流れに対応するには、鍛鋼一貫の強みを活かしたフロントローディングで、お客様のニーズをいち早くキャッチし、協働でモノづくりを進めていくことが大事です。さらに、生産プロセス改革である「鋼材4Sリエンジ」を着実に進めていきます。今年の5月にはエネルギー改革の要である製鋼リエンジに着手しました。具体的には、電気炉排熱からエネルギーを回収・変換し活用するというものですが、これは国内電炉業界初の発電事例として取り組んでいるものです。当社は電力多消費産業として、地球環境に大きく貢献する省エネ活動やリサイクル活動にも積極的に取り組んでまいります。

また、鋼材の現地調達化も推進しています。インドのウッシャー・マーティン社への技術支援は2期目に入りましたが、今期は品質や安全をより向上させ、インドやアセアン諸国内で安定的な調達ができるフェーズへと進めていきます。

鍛造事業全工程の更なるベースアップ

鍛造事業は、切断から機械加工まで、すべての工程のベースアップと、リエンジによる能力増強を同時に進めています。具体的には、国内向けCVTの増産、部品の小型化に対応するため、CVT熱間鍛造プレスラインを新設します。また、新型IMV販売開始に伴う顧客の現地生産に確実に対応するために、AIT(タイ)の安定操業体制を確立させ、ASEANでの安定品質・安定供給を確実に実現しています。

水素社会、インフラ再構築に向けた貢献

ステンレス鋼事業は当社のオンリーワン事業の一つとして、水素社会や社会インフラ再構築への貢献を果たしています。トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」に採用されている高圧水素用ステンレス鋼AUS316L-H2は高圧水素ガス環境で高い延性を発揮する強みを活かし、部品の小型化・軽量化に貢献していますが、より高品質で低コストな製品の開発を更に進めていきます。また、トヨタグループの一員として、トヨタ自動車が進める「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に貢献していくことに加え、東京オリンピック開催を前に、道路や建物、橋梁など、老朽化したインフラの再構築に対し、当社の高機能で多彩なステンレス鋼が、今後より幅広い分野で耐震性や耐久性の向上に貢献できると考えています。

電磁品事業を新しい柱とした、「安心・安全」な社会の創造

当社の製品「マグファイン」は、重希土類であるジスプロシウムを使っておらず、レアアースの資源問題に対応した製品です。また昨年確立した一体射出成形技術による成形自由度の高さと併せ、市場での優位性は高いと捉えています。今後は地産地消の考え方に基づき、海外子会社のAMC(チェコ)とAMT(中国)で製造する磁石の生産性向上を果たし、現地調達化に対応していきます。またセンサ事業では、食の安心・安全に貢献する異物検知装置を開発しました。クルマの世界で実現してきた「安心・安全」を、幅広い産業分野でご提供していきます。金属繊維事業では、今年5月より東浦工場の生産ラインが稼動を開始しました。これにより、全世界でも当社を含めた2社しかできないアモルファスワイヤ※6の生産ができるようになっただけでなく、素材からセンサまでの一貫生産が可能となりました。ゴルフクラブのシャフトの補強材としての採用をはじめとして様々な用途への拡大を模索しています。電子部品事業は世界的に普及が進むハイブリッド車のインバータ用冷却部品での展開が進んでいます。これは、フロントローディングで、開発段階からお客様と一体となってモノづくりに取り組んできた成果であり、またBAPを考慮した生産体制の確立も推進しています。デンタル事業は引き続きアメリカのほか、グローバルで事業を拡大していきたいと考えております。

※5 1S「正直(Shojiki)が一番、清掃(Seiso)第一、安全(Safety)第一」を掲げた愛知製鋼の企業風土。

※6 アモルファスワイヤMIセンサの中核素材となる金属繊維。昨年、ユニチカ(株)様より事業譲受を完了した。

愛知製鋼の重要課題(マテリアリティ)について、なぜこれらが重要であるのか、基本的な考え方と具体的取り組み内容についてお聞かせください。

グローバルでのコンプライアンス意識の向上と持続可能な企業体質の強化

「1S」でいうと「正直」に当たる部分で、従来より当社が最も大切にしていることです。グローバルとしては、海外駐在員に「1S」を自らの言葉で説明させるなど、現地社員への浸透も徹底的に実施しています。グローバルビジネス拡大による経営リスクに加え、世間で取り沙汰されている企業不祥事の未然防止、そして今回の事故の教訓を踏まえ、法令やルール遵守に加え、作業標準の見直し、安全教育の再徹底など、コンプライアンス違反を未然に防ぐ仕組みづくりをアイチグループ全体で取り組むことで、「世界中で安心・安全」という価値をご提供できるよう努めてまいります。

すべての社員がより安全で働きやすい環境づくりの促進

私は社長就任当初より、従業員満足度を重要視しています。各セクションの責任者には、毎年作成する部方針の中に、従業員満足度を向上させるための取り組みを記載するようお願いしていますが、それは社員のことを知り、社員に気持ちよく働いてもらうことが、最終的にはお客様の満足につながると考えているためです。今年の1月にはダイバーシティ推進チームを設置し、女性も高齢者も障がいのある方も、存分に活躍できるための職場整備をはかっています。本年12月に完成予定の新事務本館でそれを具現化させることにより、多様な社員が安全で働きがいを持って仕事に取り組んでもらえると期待しています。

安心・安全でグローバルに新しい価値を与える競争力に優れた製品の提供

当社が人の命を守るモノづくりをしている、ということを、改めて深く心に刻む必要があります。これを追求することで、「世界中に安心・安全」を提供することができれば、それが当社にとってのCSV(共通価値の創造)にもつながると考えます。自分の会社だけでなく、社会や地域にとって何が貢献できるのか、ということを全社員が共有して、それに向かって仕事に取り組む。社会、会社、そして社員一人ひとりが目指すベクトルが一致することは何より幸せなことだと思います。

地域コミュニティとの関係強化と積極的な社会貢献)

企業の継続には地域社会からのご理解、ご協力が不可欠であり、だからこそ、地域の皆様から「いつまでもこの地に愛知製鋼があり続けてほしい」と思っていただけることが大切です。建設中の新事務本館には、南海トラフ巨大地震などの各種自然災害を想定した防災機能を備えており、災害時対応の地域インフラの一つとして役立てていただけるように設計しています。こういったことも含め、地域からのよりいっそうの信頼獲得に向けて取り組んでいきます。

地球環境と調和したモノづくりにむけた取り組みの強化

当社のモノづくりは電気炉によりエネルギーを大量に消費します。このため、CO2の削減と省エネルギー・温暖化防止については、自社の使命として積極的に取り組む必要があると考えています。また鉄スクラップを再生利用して製品にする「資源循環型企業」として、今後さらに3Rを推進し、その責務を果たしていきます。また、自然との共生の取り組みとして生物多様性保護における森づくりと緑化活動を実施するなど、環境との調和と社会・地球の持続的発展に貢献していきます。この考え方をベースに「アイチ環境取り組みプラン2020」を策定しました。まずは今後の目標達成に向けて取り組んでまいります。

安定的・持続的成長を支える強固な財務基盤の確立

財務基盤が安定しなければ、会社は株主の皆様に配当もお出しできず、満足な社会貢献もできません。適正在庫水準の見極めや、バランスシートの管理をはじめとする財務基盤の強化に取り組み、年輪経営を確実に実践してまいります。

最後にステークホルダーの皆様へのメッセージをお願いします。

今回の事故の教訓を決して忘れることなく、「ステップアッププラン」の確実な実行により、「ゼロからの再出発」を果たすだけでなく、より強固な経営基盤を構築し、ステークホルダーの皆様からの信用・信頼の回復に努めてまいります。また、今回特定した6つの重要課題は、社会、そして当社から見て共通の達成すべき課題であり、これを達成することで、「社会課題の解決」と「当社の競争力向上」というCSV(共通価値の創造)につなげてまいります。そして、社員全員が心をひとつに、「I Will」の当事者意識を持ち、「Ever Better(これまで以上)」の姿勢で課題に取り組み、確実な年輪的成長と2020年ビジョンの達成に取り組んでまいります。ステークホルダーの皆様には、経営全体として着実な成果を出すことで恩返しさせていただきたく考えております。これからも愛知製鋼への変わらぬご支援・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。