トップコミットメント

“もっといい会社”になろう。


代表取締役社長 藤岡 高広

私は当社が目指すべき“もっといい会社”を、以下のように考えています。

  1. 私たちの生産する素材で、お客様の「いいモノづくり」に貢献できている。
  2. 一人ひとりが自分がやるんだという意識(“I Will”の当事者意識)でチャレンジしている。
  3. 人がイキイキ、ワクワクと働けて、職場に笑顔が溢れている。
  4. 「いつまでもこの地にあり続けて欲しい」と地域から思われている。

愚直・地道・徹底的な「モノ(素材)づくり」で、社会に貢献してまいります。

2016年度は、2016年1月8日に当社知多工場で発生した爆発事故を受け、しっかりとしたモノづくりを実践できる会社となってステークホルダーの皆様へ恩返しをしていくためのスタート地点とも言える年であり、また新しい愛知製鋼の始まりの年であったと考えています。

「1.8」は大きな気付きを与えてくれました。


あらためて見えた我々の弱み

今回の事故は、人・作業・風土・設備などの要因が絡み合って発生したものだと考えています。まず人の面で言えば作業のやりにくさについて上司と部下が率直に話し合える風土やコミュニケーションの不足があったと思います

設備の面では「人は間違うもの」という事実を前提とした設計ができていなかったことです。そこで、事故発生後すぐに全ての生産設備を見直し、「フェールセーフ※1」の考えに基づいて設備改善を行いました。

次に生産の面ですが、当社の強みである「鍛鋼一貫※2」についても、生産管理の面での課題が浮き彫りになりました。我々の鋼材の生産は、150トンという大ロットでの製鋼工程から始まりますが、最終製品の鍛造品番と鋼材との紐付けや在庫管理が明確になっておらず、事故の時にお客様のラインでどれがいつ欠品するのか、どの鋼種を優先して作っていかなくてはならないか、がすぐに出てきませんでした。そこで、この鋼材についてはどの鍛造品番でどこのユーザーに納入されていくのか、といったモノづくりの線図を、100人以上のメンバーが会議室に集まって紙を広げて一つひとつ作っていったのです。「これではいけない。」という思いを皆が共有できました。こうして、皆で生産計画の立て直しを図ったことは、苦いながらもよい経験となり、現在全員で取り組んでいる真の鍛鋼一貫のモノづくり活動につながっていると思います。

これまで、BCM/BAP※3に対し備えてきたつもりでしたが、それが充分でなかったことは大きな反省点です。しかし、あらためて素晴らしさがわかったこともありました。それは鉄鋼業界の「鉄の結束」です。今回、日本全国の鉄鋼会社に代替生産を依頼したわけですが、各社とも快く引き受けてくれたことに、心から感謝しています。ある意味、同業他社との日頃からの良い関係づくりが一番のBCM/BAPであるとも思いました。

今回の代替生産のしくみを他のケースにも拡げて、BCM/BAPのレベルを一段と上げていきたいと考えます。

※1 フェールセーフ誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。

※2 鍛鋼一貫鋼材の開発・生産から、鍛造までを一貫して自社内で行う愛知製鋼の生産形態であり、競争力の源泉。

※3 BCM/BAPBCMはBusiness Continuity Management(Plan)の略。事業の継続管理・計画。BAPはBackup Action Planの略。設備故障等で生産が不可能になる場合に備えて、代替生産を可能にする設備や手順、予備部品等をあらかじめ確保すること。

愛知製鋼の役割と責任

「1.8」事故の全社対策本部にて、リーダーとして先頭に立つ。
「1.8」事故の全社対策本部にて、リーダーとして先頭に立つ。

「1.8」の事故によって、お客様に大変なご迷惑をおかけしてしまったわけですが、見方を変えれば、我々のつくっている製品は、トヨタグループの中でという範疇だけでなく、日本のモノづくりにおいて大きな役割を果たしている、ということです。それを従業員も再認識したのではないでしょうか。そこで「もう一度、ゼロからの再出発で、お客様にとっていい会社になっていこう」と皆に訴えました。現在ステップアッププランとして、全社一丸となって様々な改革を行っていますが、事故で得た教訓や学びを真の意味で定着させるべく、私が先頭に立って皆を引っ張っていきたいと思います。

「New AICHI STEEL」への変革を起こす準備はできました。


カンパニー制が目指すもの

新しい愛知製鋼を牽引する組織体制として、意思決定を迅速にし、より強い事業推進を図ることを第一の目的として、2017年4月から製品を軸としたカンパニー制を導入しました。

3つのカンパニーと、それらを横串で支え、各カンパニー間のチェック・統制の役割を持たせたコーポレートオフィス機能とを組み合わせた、マトリックス組織になっている点がポイントです。「鋼(ハガネ)カンパニー」「鍛(キタエル)カンパニー」「スマートカンパニー」といった、従業員皆にわかりやすく、少しユニークなネーミングにすることで経営陣の思いに共感していただき、各カンパニーの強いリーダーシップのもとで「イキイキ・ワクワクしながら仕事に燃える」組織になってほしいと願っています。

また、ガバナンス機能の向上も狙いの一つです。社長直轄部署に監査室を含めたほか、執行監督と業務執行の役割を明確に分けました。また社外取締役にも積極的にご意見をいただき、これまでになかった新しい考えをご助言いただいています。

このカンパニー制のもと、我々が考えていかなければならないのは、低炭素社会に貢献するクルマの機構変化・電動化への対応です。近い将来、エンジンを使ったクルマは減っていき、特殊鋼の使用量は減っていきます。となるとこれまでとは違った事業モデルを構築していかなければなりません。現在、ハイブリッド車(HV・PHV)や燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)といった次世代自動車への対応として、高圧水素用ステンレス鋼や、EVモータへの適用も狙え環境にも優しいDy(ジスプロシウム※4)フリー高性能磁石などの製品がありますが、これらの特殊鋼以外の事業分野の更なる推進が急務です。

しかし、エンジンがなくなっても、ミッションや足回り部品における特殊鋼の需要と重要性は変わりません。そのキーワードはやはり燃費改善、環境貢献につながる「高強度化」と「軽量化」であり、これまで以上にその技術力を磨いていく必要があります。

現在、当社の鍛造品生産量は日本一となっており、また海外子会社として、北米、中国、東南アジアに鍛造品生産拠点を構えています。これをアイチグループ全体で世界一にしたいし、それにふさわしい企業にならないといけないと思います。また我々の新たな事業の柱であるスマートカンパニーでは、クルマの自動運転システムなど、センシング技術を使った新しい取り組みが進行中で、その実現に大きな期待をしています。

※4 ジスプロシウム重希土類(レアアース)の一種。一般にネオジム磁石の保磁力を高めるための添加物として利用されるが、安定供給確保への懸念および採掘による環境破壊が問題となっているため、愛知製鋼は2010年にジスプロシウムを使用しない高性能磁石を開発。

マトリックス組織がポイントのカンパニー制による新体制

愛知製鋼で働くということ

もう一つの新しい取り組みが「働き方改革」です。
従業員全員が「愛知製鋼で働いていてよかった」と思えるような環境や仕事のやり方に改善していくことが「働き方改革」だと考えています。

2017年1月に新本館の一期工事が完了し、執務を開始しました(「ここから始まる新しい愛知製鋼」参照)。私は働き方改革に必要なものは、まずコミュニケーションだと思います。この新本館には、中央に「コミュニケーション階段」と我々が呼んでいる吹き抜けの階段があり、それを中心に人の行き来が容易でオープンなオフィスとなっています。しかし、これはあくまで入れ物で、新しいオフィス環境の中で何を為すかは従業員自身が見つけることです。皆がどんな働き方改革を起こしてくれるか、楽しみにしつつ、社長の私としてもこの働き方改革を自分のミッションとしてしっかりとフォローしていきます。

またワーキングウェアの刷新や、広報活動の強化など、愛知製鋼ブランドの向上にも努めています。これによって、従業員が自分たちの会社に誇りを持ってもらえるようになれば、働く意欲も向上し、“もっといい製品づくり”にもつながるものと思います。

これらの新しい取り組みを通じて、従業員一人ひとりが「New AICHI STEEL」への変革を図っていってくれることを期待しています。

日本の愛知製鋼から、世界のAICHI STEELへ。


愛知製鋼の宝とは

我々には変えてはいけない、愛知製鋼の宝ともいえるものがあります。それは創業者 豊田喜一郎から連綿と受け継がれる「よきクルマはよきハガネから」という創業の精神です。喜一郎には「国内初の自動車をこの手でつくりたい」という誰よりも熱い思いがありました。私がいつも言っている“I Will”、「私がやってやるんだ」「私が会社を変えていくんだ」という強い当事者意識はまさにこの事です。そして新しいモノ・技術への挑戦・創造の精神、現地現物、原理原則。これは全従業員が持つべき普遍的価値、大切にしたい精神です。これらをあらためて「Aichi Way」として意識づけることを、徹底的にやっていきます。

「愛知製鋼の製品を使っていれば世界中で安心・安全」というスローガンを掲げていますが、それにはESG※5にしっかりと取り組み、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に認めていただける、グローバルで通用する企業となるための足元固めをしないといけない。そして、何より良品廉価のモノづくりと、「社会との共通価値の創造」であるCSV※6の視点に立った、社会のお役に立てるいい製品づくりをこれまで以上に進めていく必要があります。

今の愛知製鋼にとって、2020年 連結営業利益200億円は簡単な目標ではありません。もっと知恵を絞って、いろいろなチャレンジをし続けなくてはいけない。そのために私は旗を振り続け、高き目標に向け全従業員が一丸となって取り組んでいける会社風土をつくってまいります。

※5 ESGEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字。

※6 CSVCreating Shared Valueの略。社会的な課題の解決と企業の競争力向上を同時に実現すること。